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麒麟(きりん)

麒麟

○撮影場所:京都府下京区 西本願寺唐門
○制作年代:寛永年間(江戸初期)か
区別はつきやすいのだが、場所によって図像が異なる。流派の違いだろうか?

■概要
中国発祥の瑞獣。世の中が平和な時、聖王の治世に出現するという。
その姿は、『和漢三才図会』に『本草綱目』の引用で麕(くじか)の身体に 牛の尾、馬の蹄、一本の角を持ち、その色は五彩、腹は黄色であるという。
想像上の動物であるが、図像はしっかりとしており、判断しやすい。

■特徴
龍馬と見分けがつけば、間違えることはほぼない。
・顔:麒麟の顔参照
・髭がある場合があり、毛はカール気味
・蹄(ひづめ)がある
・彩色はさまざま
・組み合わせ:雲(五色)
・麒麟の姿:麒麟百態(年表)
・関連:「鳥獣戯画」の動物

■来歴
雄を麒、雌を麟といい(逆という説も)、中国では聖王の治世の時に出現するとされた。
四霊の一体であるが、四聖獣では虎と入れ替えになっている(四霊と四聖獣の 発祥の違いか)。 日本ではどのように流入したかはわからないが、『日本書紀』や『延喜式』の祥瑞に その名を見ることができる。また、「鳥獣戯画」でもその姿を対で見ることができるが、 片や角が剣をかたどっている。何らかの根拠があってのものであろう。
麒麟の姿は彫刻や絵画としてよく見ることができるが、身近な例としては 某ビール会社のラベルが有名である。
中国清朝では武官一品の印とされた。

■意味
世の中が平和な時に現れるとされ、殺生を一切せず、 肉も植物も口にしないと言われていることから、理想、平和の意味があると 思われる。また、鳳凰と同じく瑞兆(めでたいこと)の意味も取れよう。
鳳凰と組み合わされる時があり(麟鳳呈祥)、天下泰平の光景に例えられる。

出典・参考

・『淮南子』「天文訓」(『新釈漢文大系』54)
「麒麟闘いて日月食し・・・。」

・『論衡』「講瑞五十」(『新釈漢文大系』69)
周の獲麟の麟は、ショウ(鹿の下に章)に似て角あり、武帝の麟もまた ショウ(鹿の下に章)の如くして角あり。

・『論衡』「講瑞五十」(『新釈漢文大系』69)
鳳皇・騏は太平の瑞なれば、太平の際に、来り至る有るなり。 然れどもまた未だ太平ならずして来り至る有るなり。鳥獣の奇骨・異毛、 卓絶非常なるは則ちこれなり。

・『日本書紀』巻第二十五 孝徳天皇 白雉元年二月九日条(岩波文庫『日本書紀』5)
所謂(いはゆ)る、鳳凰・騏・白雉・白烏、かかる鳥獣より、草木に及(いた)るまで、符応(しるしこたへ) 有るは、皆是、天地の生す所の、休祥嘉瑞(よきさがよきみつ)なり。

・『日本書紀』巻第二十九 天武天皇 九年二月二十六日条(岩波文庫『日本書紀』5)
「人ありていわく、『鹿の角を葛城山に得たり。その角、本二枝にして末合いて宍あり。 宍の上に毛あり。毛の長さ一寸。則ち異(あやし)びて献(たてまつ)る』と申す。蓋し、麟の角か。」

・延長5(927)年『延喜式』巻二十一 治部省 祥瑞 大瑞(『国史大系』26)
麟 仁獣なり。麕身にして羊頭。牛尾・一角。端に肉あり。

・正徳2(1712)年『和漢三才図会』巻第三十八 獣類 麒麟(ワイド版東洋文庫『和漢三才図会』6)
『本草綱目』に、麒麟は瑞獣で、くじかの身体に牛の尾、馬の蹄をもっている。身体は五彩で腹の下は黄色である。 高さは一丈二尺、蹄は円く、角は一つである。角の端に肉がある。音声は鐘呂と一致し、行動は規矩に合致し、 遊ぶには必ず地を択び、その場所を熟知したあとでそこにいる。生きた虫をふまず、生きた草をふまず、群居せず、 仲間とともに行動することもない。陥穽におちることなく、羅網にかかることもない。王者の政治が仁にかなえば 必ず姿をあらわす、とある。

・出石誠彦「上代支那に於ける神話及び説話」(『支那神話伝説の研究』所収)
即ち麒麟はその起源を鹿の動物崇拝に発し、程なく、それが、思想上霊獣としての属性を発達させ、 終に実在の鹿と異なる形態を必要とするに及んで一角とせられつつ漸次に霊獣としての属性を 結成したものかと考へられる。

・高藤晴俊『図説社寺建築の彫刻』
・『日本・中国の文様事典』
・『中国五福吉祥図典 禄 喜』

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