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枕慈童〔菊慈童〕(まくらじどう〔きくじどう〕)

菊慈童

○撮影場所:富山県高岡市 伏木曳山祭石坂町山
○制作年代:万延元(1860)年

枕慈童も仙人の部類だが、仙童という位置づけなので 顔は若く見えるようにしてある。

■概要
別名菊慈童。中国の仙人で、日本では能で有名。
菊が咲き乱れる場所に慈童という童顔の仙人がいて、 700年生きているという。
この仙人の持つ枕には『法華経』の句が書いてあり、その句 を菊の葉に写して川の流れに浮かべると、葉にのった雫が 不老不死の薬となり、慈童はそれを飲んでいたという。 このことから、菊水が長寿の象徴とされ、縁起の良いものといわれている。 川に対して「菊」の字を冠したり、お酒の銘柄に使ったりするのはこのため。

■特徴
・童子の姿
・菊の花と水の流れがある
・筆を持ち、硯を脇に置く
・菊慈童の姿:菊慈童百態
・関連:能の人物
■図像
・林守篤『画筌』(正徳2【1712】年自序、享保6【1721】年刊)

出典

・『太平記』巻第13「法花二句の偈の事」
(周の穆王寵愛の童子が穆王の枕をまたぐという罪を犯し、穆王が泣く泣く遠流を命じた時に) されば、穆王慈童を憐れみ思し召しければ、かの八句の中に普門品に当る二句の偈 を潜かに授け座して、「毎朝十方を一礼して、この文を一返唱えよ」とぞ仰せ含め られける。かの慈童、ついにレイ(麗におおざと)県に流されて、深山幽谷の底に 捨てられけり。悲しみながら君の恩命に任せて、慈童に授けられし二句の偈を、毎朝 一返誦えけるが、もし忘るる事もやと思いて、辺りなる菊の下葉にこの文をぞ書き付け たりける。その後より、この菊の葉に置ける露わずかに落ちて、流るる水、皆天の甘露 の霊薬とぞなりにける。慈童渇に臨んでこれを飲むに、水の味はなはだ甘くして、百味 の珍に過ぎたり。(中略)その儘時代推し遷って、八百余年まで、かの慈童はなお少年の かたちにて衰老の粧なかりけるこそ不思議なれ。
長谷川端 校注・訳 新編日本古典文学全集55『太平記2』

・謡曲「菊慈童」(野上豊一郎『解註謡曲全集4』)
具一切功徳慈眼視衆生、福聚海無量是故応頂礼。
この妙文を菊の葉に、置く滴りや露の身の、不老不死の薬となつて七百歳を送りぬる。 汲む人も汲まざるも、延ぶるや千歳なるらん。

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